海辺の風景

海野さだゆきブログ

『ルサルカは還らない』御厨さと美 著 再び

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ここで無料で読めますし、PDFの形式で購入もできます。是非読んで頂きたいと切に思っています。台詞だらけで読みづらいかもしれませんが、無駄な言葉は一切ないので読み込んでいただきたいです。

 

過去に取り上げていますけど、今こそ読まれるべきだと思っています。ちっとも古びていないどころか、これが描かれた時と何が変ったのかと思います。毎日まいにち新しいネタでメディアが埋まっているので、変化は起っていると思いがちですけど、どちらかと言えば、変らないものが見えにくくなっていると思います。

 

つまるところ、日本は中朝論から抜けていません。江戸時代だって海外の正確な情報は届くところには届いていました。ですが、周辺でルサンチマンまみれになっていた「反政府勢力」には自分たちの妄想しか見えておらず、つまり目先の権力奪取ですね、世界史的視野からみて自分達がどういう立ち位置にいるのかはまったく分かっていなかったようです。

 

例の『新論』なんて美文ですけど、中身はスカスカでした。後に作者が反省して内容を撤回していますけど、撤回するほどの中身だったのかと言えば、、、、。でも、その美文のカッコ良さに浮かれ、「俺たちだったらもっとうまくやる」なんて、浅いプロ野球ファンが「総監督化」する程度のことだったと思います。

 

その江戸時代の怨念に生きていた偏狭な連中が実務では無能ぶりを発揮して、長期外遊で文字通り遊んでいたりして、結局自分達が敵だと言っていた側の人間を登用するしかなかった、なんて情けないことなり、亡国寸前まで行ってしまったわけですから。

 

ウクライナもこの状況でいまだに汚職の逮捕者が出続けているのです。アメリカをはじめとする支援国からの援助は本当にちゃんと届いているのか、使われているのか、といえば暗い予想しかできません。

 

まあ、この国も先の総力戦の最中に同じことやっていましたから、まずは自己反省ですけど。

 

自分達の金融、経済政策が失敗して、急な下り坂まっさかさま状態になったのに、注意を外らすために「外敵」を扇っているなんて、前の戦争の時とまったく同じです。兵器なんて増やしたって、肝心の運用もロクに考えていないで妄想にふけっている、という点も同じですね。

 

僕はもう予備役どころか棺桶に片足の年齢ですけど、兵隊にさせられるのは若い皆さんです。先の戦争でもどれだけ「殺し殺される側」に追い遣られたことでしょう。大岡昇平さんは自分の「出陣の見送り」を旗降って盛大にやっている人たちを目の前にして

 

「俺はこの人たちに殺されるんだ」

 

と思ったそうです。僕の亡き父も、ティーンエイジャーでしたけど、相当すさみました。田舎の三男なんて当時の状況では徴兵される未来しかなかったのです。

 

思ってもみてください、学校から家族からよってたかって「死んでこい」と言われる辛さ恐怖を

 

父は「兵隊になったらおしまいだ」となんとか回避すべく知恵を駆使しましたけど、、、結局は海軍の軍事工場で蛸部屋生活。あまりに過酷な労働環境、そしてそこで行われた壮絶なリンチ。身近に自殺者が出る住み込み蛸部屋で、眠れない夜を過ごす。

 

父は敗戦後心身ともにボロボロになり、1年間親戚に預けられたのでした。これもひどい話ですね。故郷、家族は父の帰還を拒否したわけですから。ズタボロになった様子を「世間」に見られたくなかったのですね。

 

幸い海辺の生活で父はゆっくりと心身ともに回復してゆきました。で、僕もこうしてこの世にいるわけですけど、父は時々病的な「せっかち」さをみせて、僕ら家族を当惑させました。

 

例えば風呂は脱衣から出るまで5分、それも狭い浴場でいも洗い、の世界で24時間。父の心的外傷は常に何かに急かされるという強迫観念となって顕れるのでした。その症状が出るときはもう1秒も待てなくなるのです。それは父自身わかっているのですけど、自分ではどうにもならなかったようです。

 

そう、戦地に行かなくても、戦争による心的外傷はひとを壊していました。忘れないです、息子としては絶対に。

 

そんな僕は、例えば現在の『異世界行ったら本気出す』は『満州行ったら本気出す』に聴えてしまうわけです。前の戦争の時も盛大に仮想戦記ものが出版され人気でした。経済政策の破綻で特に若い人に希望がなくなってしまった時に、そうした「もしこうなったら」は爆発的に流行したのです。

 

やばくないですか。この異世界ものだらけの現状。

 

インターネットの時代です。国内ニュースだけではなく、海外のニュース、動向をみてください。まったく違う世界が像をみなさんの網膜は結ぶはずです。

 

その世界への理解の一助に、このマンガはなります。是非ご一読を。そしてしぶとく生き残ってください。年寄りにはこのくらいしかいえません。

 

あ、なにしろ御厨さんは絵が綺麗です。美女を描かせたら天下一です。。。あ、イケメンもいますよ。メカもすざまじい描写力で描かれていますし、よみごたえたっぷりあります。