海辺の風景

海野さだゆきブログ

『Perfect Days』ヴィム ヴェンダース監督

ヴィム ヴェンダース映画は眠い

 

1月4日、もうお正月は終わっているから映画館も空いているだろうと思ったら、ロビーは大混雑。あれ、そうか子供達はお休みだし、「世間」はまだお正月休みなんだ、、、と正月も平常通りに働いていた高齢者は自分と「世間」とのずれをまたまた感じたのでした。

 

まあ、でもみんな『スパイ アンド ファミリー』とかだろうし、こっちは空いているよな、、、

 

って、99人キャパに70人は入っているではないですか、久々に自分の座席の両隣が塞がってしまいました。

 

え?みなさん、スクリーン間違えてません?だってヴェンダースですよ、ヴェンダース。。。。。

 

ああ、役所さんがカンヌとったから話題なのかって、でもね、ヴェンダースですよ、ヴェンダース。。。。

 

ヴェンダース君はとても良い映画を撮ります。でも僕は自宅では完走したことがありません。いつのまにか寝てしまうからです。自宅のリラックス環境では最後まで目を開けていられません。。。。

 

みなさん、だいじょうぶ?

 

映画開始。おいおい、この画面サイズかよ、、、、、、、。あああ、君のやりたいことがもうわかってしまったよ。このサイズだよね、、、やってみたかったんだよね、、、わかるよ、すごくわかる、舞台は日本だしね、、、。

 

早速ヴェンダース君の「繰り返し攻撃」が始まりました。ああ、君は『シャル ウィ ダンス』での役所さんの自転車のシークエンスが好きなんだね、、、僕もだよ、、、

 

って、中年のおっさんの何の代わり映えもしない、何の変哲もない日常描写の繰り返し攻撃です。

 

20分過ぎにはすやすやと寝息が聞こえてきました。。。。

 

ふふふふ、この程度の攻撃でHPゼロになるようでは、このダンジョンは攻略できませんよ、、、、まあ、こん棒とホイミーだけでクリアする強者もいますけど、、、

 

ひゃあ、、、パティ スミス、、、、みなさん、だいじょうぶ?聴いたことないよねえ、、、という「カセットテープ攻撃」に集中力を失って、みるみるHP減らしているひとたちの静かな呼吸が聞こえます、、、、

 

いよいよ「なーんにも劇的なるものが起こらない攻撃」に耐え兼ねた人が座り直してます、、、、

 

しかし、首都高は使わないでしょう。必然をまったく感じないですよ、お金と時間の無駄、、、ってあああ、そうか

 

君はタルコフスキーの「あれ」がやりたかったんだね。。。わかるよ。。。。わかる。。。わかりすぎるほどわかる。。。舞台が日本、東京だしね、、、しかし、まあ、同じ画面を再現するとは、、、、ヴェンダース君、君はしあわせだよね。

 

余計に眠くなるよね、、、なににせよ、眠さ世界一のタルコフスキーだよ、、、

 

しかし、いまフィルム現像してくれる街の写真店なんてあるの?現像撤退で僕も虎の子のマミヤ7手放したんだけど、、、

 

って、そうかヴェンダース君、あれをやりたかったんだね、、、そうか、、、、

 

っていうところで茹で玉子みたいにつるんとした若い女性登場。客席になんかほっとした空気を感じますけど、、、これ「かわい子ちゃん5人出しとけ」のアニメによくある「ねーよ帝国主義」ではないんですよ、、ね、、、

 

このあたりでヴェンダース君が必殺技を繰り出してきました。

 

木漏れ日映像です。

 

うわーーー、これは眠い!ちらちらと何かが横切るその淡い映像。

 

目が、目があああ、、、、

 

目が強烈に眠い、、、どうしようもなく眠い、、、

 

ここで客席のあちこちで「聞かれもしないことに頷く」ひとたちが、、、ついに力尽きてしまったのですね、、、、

 

これは強烈です。前からサンドマンが砂をかけてくるし、耳元では鳩の群れが羽ばたくし、体の横を何千頭もの羊がモフモフしながら通り過ぎて行く、、、、そこに「船頭がうなる民謡に併せてたたく心地好い樽の音」が、、、、

 

ふふふ、ヴェンダース、これは強烈な攻撃ですね。でも僕はチートでHPが999に自動的に戻っちゃう技を習得済みなんです。

 

イントレランス』や『裁かるるジャンヌ』といった無声映画を学生時代にしっかり授業で浴びていたからね、、、寝たら単位もらえないし(嘘です)、、、、この程度では僕は倒せないよ、、

 

って、おいおい、貧乏アパートに最新型ベンツって、、、え?御曹司だったの?韓国ドラマじゃあるまいし、、、ってこれもやってみたかったんだよね、

 

やあやあ、それにしても出てくる役者さん、全員「芝居ができる」人ばかりですね。。。「下手な役者にゃ叫ばせろ」ですけど、優れた役者さんばかりで、だれも叫んだり泣きわめいたりしません、、、いい役者さんだけの映画は眠いのです、、、、

 

あああ、ルー リードだったんですね、、、納得の選曲ですが、今日のお客さんはどうみてもNYパンク聴いてきた客層ではないですよ、ヴェンダース君、、、『トランスフォーマー』の1曲なんですね。いい歌です。ほんと。そうかルーはドイツにいたこともあったんですよね。

 

最後、役所さんのなんとも言えない表情のアップが続きます。すごいよなあ、この表情の変化は。

 

でも僕は役所さんが「めりーくりすますみすたーろれんす」とか言い出さないか心配になってしまいました。

 

さて、客席の勇者のほとんどが志半ばで倒れてのエンドロール。

 

ふふふ。ラストマン スタンディング だ。。。僕は完走した達成感、満足感。

 

そして、僕の胸にほんの小さなさざ波が起きます。その小さな波動がとても心地好い。僕のどこが波立ったのかはわかりませんが、この言葉にはできない感じ、それがヴェンダース映画のすばらしいところなんです。

 

ありがとう、ヴェンダース君。やっぱり君の映画はすばらしいです。

 

でもね、、、、せっかくのエンドロールなのに途中でトイレにダッシュする高齢者のみなさん、疲れて重い体を座席からやっと引き剥がすひと、連れの彼女に申し訳なさそうな顔をしているひと、、、

 

やっぱり、眠くて長い映画は観るの大変です。