海辺の風景

海野さだゆきブログ

「GランDKとダーティフェスタ」 秀章著 イラスト 榎本ひな ガガガ文庫

僕は秀章さんのファンだ。デビュー作「脱兎リベンジ」以来ファンだ。ライトノベルということに限らず、新作を楽しみにしている作家は3人しかいない。秀章さんはそのひとりだ。

 

2作目の「空知らぬ虹の解放区」全2巻も、出たのが分からなかった。今回も、もう新作は出してもらえないのかな、と思っていたところ、偶然に見つけた。アマゾンの検索はデータが巨大になりすぎたのかうまく動かないのだ。

 

秀章さんの3作を通じてのテーマは「リベンジ」。まあ平坦な言葉で言えば、その方が秀章さんらしいけど、「再挑戦、再生」だ。

 

今回はアホ男子高校のアホ男子が主人公だ。それがエリート女子高校と「共同」文化祭をやるというところで事件が始まる。

 

典型的、とか「お約束」とか、そういうことを馬鹿にする人がいるけど、僕はそうは全く思わない。お約束をきちんと出来るというのは相当の実力がないと成り立たない。フェリーニの「道」はフェリーニという天才だから出来た映画であって、他の人が監督したらどーしよーもない三流作品で終わったと思う。

 

作家の力量は、読者や観客が先を読めているのにもかかわらず、感動してしまう、という、引き込まれてしまう、というところに表れる。量産時代の日本映画、時代劇のおもしろさったらない。それが本当の技術、表現技術ということだと思う。

 

秀章さんにはそういう才能がある。

 

今回も、一見「毎度お馴染の」の設定でゆくが、どこか、そう、「どこか生々しいここから脱出するという意思があるのだ。それこそが作家秀章さんの存在地点だと思う。

 

「楽しめ」今回はこの老人の、毎日うんざりするルーティーンで腐っているこの老人に一番心に響いた。ストーリー的な技巧ではない、文章のレトリカルな技術でもない、俺はこれを言いたい、というはっきりした意思が僕に響いたのだ。

 

今回はご本人に直に感想を送ろうかな、と思っています。表立ってかけないことなので(笑い)。