廃線が決まってしまった第三セクター鉄道。その存続を願うよそ者3人。彼らのすべてをかけた挑戦の物語。
これは「町起こし」の話なんですけど、僕は「人起こし」として読みました。3人はいずれも所属では有能さを発揮しきれず、どこかもやもやとしたものを抱えていました。
3人とも大企業、巨大組織に所属していたんですね。ワインバーグ先生のお父様の名言を僕はこう言い換えてきました。
会社には仕事をする能力がある人と、会社に居続ける能力がある人がいる。
で、どんな会社もやがて「会社に居続ける能力が高い人」だけになり、実務が崩壊するのです。どんな組織でもそうです。ここのところの大企業の大失態、凋落は全部それが発現しただけだと思います。
3人が繰り出す対策の数々の実現可能性とか、そういうことを気にする人はいるでしょう。実現したことを並べているのでは、と思います。しかし、僕はこの「数々の対策」を思いつき、それを実現させて行く彼らの力の源のことを思うのです。
それはたぶん「こういう人たちを仕事をしたかった」です。山一の「しんがり」の人たちの動機も間違いなくそれでした。
さて、この物語は中高年の再生、新しい出発の物語でもあります。よれよれになった我ら老人は、再び社会になにかできる存在になれるのだろうか、ということでしょう。
実際、活躍している「再出発」した中高年も多くいるのは知っています。海外で、とか。ではこの僕は?
もう結構やれたので、僕はもう出発はしないでしょう。