海辺の風景

海野さだゆきブログ

『自殺するには向かない季節』海老名龍人 著 椎名優 イラスト

学校でも家庭でも冷たく漂うようにそこにいる、という感じの主人公。ある日、クラスメイトの少女が自殺したと聞く。彼には思い当たることがあったのだ。その思考が定まらぬなか、やはり群れから外れている同級生男子からタイムスリップを引き起こすという錠剤をもらう。

 

いらだつ気分の勢いで錠剤を飲んだ彼は本当に数日前という過去にもどっていた。戻った彼は引き寄せられるように自殺した少女と出会う。

 

粗筋を書くのが難しいです、この小説は。主人公の気分、思考というものをたどることで進んで行くからです。

 

で、主人公は自殺願望の少女とふたりで、自殺について色々と調べることになるんです。周囲には知られないように。.。.。それじゃ、秘密のデートみたいですよね。でも、これがなんというか、暗い空洞に無意味な音が響き続けるみたいなやりとりに終始するんです。

 

しかし、それでも、微妙に変って行くんです。微妙に。疎遠だった姉との関係も。そこがなかなかの読みごたえです。そして、まったくもって予想もしない結末となります。

 

よいです。僕はこういう不思議な話が好きです。そう、清水マリコさんのあの不思議な世界に似ているなあ、と思いました。是非小説を続けていただきたいと思います。読みたいです、次回作。