海辺の風景

海野さだゆきブログ

『彼女の感触』前田峻也 著

まんがを成り立たせているモノってなんだろうって、思いました。

 

このまんがのお話は途中から「難しい」ことになっています。主人公(男子)が好きになった転校してきた女の子、生徒手帳をみたら性別が「男」になっていました。まさか。。。。

 

いわゆる「男の娘もの」や「男女入れ替わり」などの『とりかへばや物語』の昔からある変則?ラブストーリー、になるはずだったのですけど、作者も認ているいるとおり、そのことを軸にした話は途中で中断し、後半は熱血猪突猛進ラブストーリーになっています。

 

いや、学校では無理でしょう、その設定。。。。。などなど。。。。。というより、僕が感じたのは、作者は描いているうちに、自分が描きたいものに、その熱に逆らえなくなった、正直になったのではないかしら、と思ったのです。

 

だって、最初からなんか「圧力」高かったですよ、そのパワー感に好感をもったので、話がどうだとか、デッサンが狂っているとか、どうでもよいって読み進んだのです。

 

あとがきで作者は「テーマを消したこと」を「後悔していません」と、潔く告白しています。どうなんでしょうか。長期間続いたまんがって、最初の設定を守り続けられた例って少ないのではないでしょうか。ギャグまんがだったはずがシリアスものになっていったとか、わき役みたいな存在がいつのまにか主人公みたいになっていた、とか。。。。いくらでもありますよね。

 

これって、例の「キャラクターが勝手に動いてゆく」ってやつですよね。それって、物語を作る人にとって幸せなことなのではないのかなあ、って思いますけど、どうなんです?実際。

 

前田さんは、エネルギーあふれるキャラクターを産み出した時点でもう成功したのでは?そのキャラクターが束縛を嫌っていることに気が付いて、解き放った、その姿勢はものを作る人としては誠実ナノじゃないかな、って。。。。

 

序破急。。。。

 

その面白さを作者として味わったのではないでしょうか。

 

これだけエネルギーのあるキャラクタを産み出せるのですから、今度はそのエネルギーを存分に解き放つことができる舞台設定、世界を用意すればよいのではないでしょうか。

 

プロとして「次」があるのかは知りませんけど、僕はこのまんが好きですし、「次」があれば読みますよ。