海辺の風景

海野さだゆきブログ

「ジョーカーズ!!」ノギノアキゾウ 著 群青ビズ イラスト

スマホの非合法アプリが超能力を付与するという世界。主人公はおもしろくあればなんでもオッケイ、という大衆のエネルギーをその源とする非合法アプリを駆使するふたつの流れに巻き込まれる。ひとつは面白ければオッケイをそのまま活動原理とする団体。もうひとつは、その無責任な趣向を利用して自分の欲望を実装しようとするストーカー。

 

スマホの非合法アプリはよいのですけど、それってどういう原理で動くのかな、なんて思ってはいけないのです。一国の軍事力をしのぐような力さえ持つという、、、、そんなものが一般人に入手可能だというところも、考えてはいけないのです。

 

ゲームの仮想現実。その線で読み切るのがよいのでしょう。少しでも現実に引き寄せてはいけません。

 

スマホ、アプリ、ガチャ、クラウド、などなどのギミックを除いてみれば、この物語の基軸はみえてきます。決戦の場面での主人公の、ヒロイン見捨て姿勢、そして自分以外の人びとの「力」を借りる、という部分です。

 

でしたら最初の方でもっと主人公が現実的に直面している事柄の描写がもっと必要だったと思うのです。実姉が植物人間状態とか。だとすると、一ヶ月に一体いくら生命維持にお金がかかるのか。とてもじゃないけど、普通のサラリーマン家庭には払えないです。主人公はへたれなんてやっている場合ではなく、1円でも稼がないと姉の命を保てない、そういう状況です。だとすれば、そのアプリ、何に使う?

 

僕は残念に思うのです。ポッセと組んで高額医療費を稼ぐ、そういう主人公にはならなかったのでしょうか。不可能がないらしいアプリで姉の症状改善を、とはならなかったのでしょうか。

 

僕も姉がいる弟なんですけど、まあ、弟が抱く姉への気持ってのは、ひとそれぞれでしょうけど、この主人公みたいに姉にピンチを救われた経験、僕にも何度もあります。ライトノベル的に「姉もの」にするには、ちょっと真実すぎる出来事が僕らにはありました。

 

目覚めぬ姉をなんとかしよう、そういう話だったら、多少の荒唐無稽ぶりはオッケイだったんですけど。はい。