大洋レコードさんのおかげで、ブラジル音楽の中でも僕好みの作品、それも現在の、に出会うことが多くなりました。今回はもうとびきり上等の女性ボーカル、アコースティックなアルバム。
とにかく歌の表現が素晴らしい。浅学なので、歌い手のポジションとか分からないが、相当のレベルです。もう最初のフレーズでノックダウンされました。わずか29才で亡くなってしまった天才女性アーティストの作品集。
ゆったり、とか癒しとか、そういう安易なものではありません。すごく中身の詰まった歌いですし、演奏です。ここにはちゃんと「余白の美」があるんです。
聴いているうちに、その余白を僕の記憶なのか感性なのか、わかりませんけど、色とりどりに染めて行くのです。その色景色がとても気持がよいのです。
気になるのは、日本の若い歌手たちです。空間恐怖症のように音で埋めつくし、ひたすらフラットに歌うこの頃の、です。とてもうまいと思うのですけど、なんででしょう、聞き手の入る余地がないほど、作品が作り込まれてしまっています。
歌詞も抽象的な言葉が消えて久しいです。ちゃんと伝えたい、という気持は分かるのですけど、発し手は受け取る側をもっと信頼して、波紋が拡がるような言葉と音で音楽を作って欲しいと思います。
矢野顕子さんとティンパンの、すかすかですか?という演奏がすごく濃密だったのも、なんともいえず良かったです。きっちり、とか確実とか、真剣に、とか、じゃなくて、
なんだか、上手く行きすぎる、今日は。。。とか、そんな見えないもので人は動いている、生きている、そんな歌が、僕は日本語で、若い音楽家の音で聴いてみたいです。はい。
あ、アルバムは、本当にお勧めです。レア盤らしいので、お早めにとか。