僕を音楽へ導いてくださった先達がまたひとり旅立ってしまわれた。
ユキヒロさんといえば僕にとってはこのアルバムです。2曲目の『Sayonara』は強烈すぎるほどの衝撃でした。数え切れないほど聴きました。
この曲以上に日本の、いえ、「日本の」夏を感じさせる曲はありません。聴いていて目に浮ぶ「強い日差し」でハレーションを起こした逆光の映像は間違いなく真夏の日本の「どこか」の風景なのです。
プロフェット5、だと思うのですけど、サウンドの洪水。時に立ち上る分厚い不協和音。もう誰にも到達できない音の絵なのです。
真夏になると僕は決ってこのアルバムとザ ビートニクスをウォークマンに入れて、自転車を走らせて多摩川の河口の海水と淡水がよどむ水面をいつまでもただ観ていました。陽が落ちてコンビナートが怪しいひかりのマニュメントと化するまで。。。。
ユキヒロさんのドラムは、ロックとかの緩んだ音とは違って、ぴったりピントが合った引き締まった音です。いつも。。。
いまは当時よりも使える音は増えたはずなんですけど、このアルバムの音に密度という点でも追い付いていないように思うのです。どうしてなんでしょう。こういう音がちゃんとポップに聴えるのもどうしてなんでしょう。
僕にはまったく分かりません。でも、絶対にその影響は僕が作るつたない音楽にも濃厚に残っています。
ユキヒロさんはいくつもの女性ボーカルのアルバムを手がけています。僕は最高傑作はラジさんの『キャトル』だと思います。近所のレコード屋でジャケ買いして、下宿で針を落した時の衝撃は今でも忘れません。そして、その後、このひとと思った女性に贈ったカセットテープはそのアルバムでした。後に彼女は僕の妻になりました。
「これを聴いたとき、あたしが今まで聴いていたのはなんだったんだって思ったよ」
と後に彼女は言っています。僕らをつないだ最初の糸はユキヒロさんの音だったのです。。。。
こころから感謝です。