海辺の風景

海野さだゆきブログ

『ブギ─ポップは笑わない』上遠野浩平 著 緒方剛志 イラスト

この作品も有名どころですよね。ホラーっていうべきなんでしょうか。不気味さとか、閉鎖的な空間で行われる息苦しさとか、なかなか読ませますよね。そして、異常心理へのアプローチが新しかったのでしょうか。

 

話は登場人物の視点で描かれ、その視点が移動するので、ちょっと分かりにくい感じにはなりますけど、それがまた謎を演出するんですよね。面白かったです。

 

僕があれ?と思ったのは、これって、いわゆる学園異能バトルの範疇を越えてはいないのねってことです。遠くで「社会」、つまり大人たちの影が見えかくれするのですけど、登場人物たちはそこへ問題意識をもってゆかないのですね。

 

宇宙規模の事件も学園内でおさまる。これって、『涼宮』もそうなんですけど、ライトノベルの無理のひとつですね。お約束と言った方が良いのかもしれません。

 

エログロってまあ学園から真っ先に排除されるであろう要素がこの作品では多めですけど、それによって学園自体が崩壊したりはしない程度、生徒が防衛戦をやるんですね。『ハレンチ学園』最終回をどう考えるかなあ、なんて老人は思ったりしますけど。

 

そのあたり、魔法少女モノでなんとかアプローチした作品もありますね。僕はそういうあがきが好きですね。無理な設定で作られた作品で感動してしまった自分のけりをつけるために、その設定自体に全力で立ち向かう。うん、それはよいですし、僕もそうしたことを少しはやってきたつもりです。

 

魅力的なキャラクタがまだ、ちょっとしか活躍していないで終っていまして、この作品、続くんですね、沢山。

 

まあ、遠い潮鳴りのような「大人たち」が見えてくる『イリヤの空、UFOの夏』を思い出したりしてました。たぶん続巻では語られるのでしょうね。

 

乾いた描写と云い、なかなか面白かったです。

 

『球場ラヴァーズ』シリーズ 石田敦子 著

明日にも広島東洋カープは優勝です。その勢いというわけなのでしょうか、いつものブックリーダーのおすすめにこのシリーズが入っていまして、全部読んでみました。優勝前に読み終えました。

 

これは世にも珍しい「野球ファン」のマンガです。それも少女マンガの味わいです。登場人物たちの人生と野球が時に交差するその瞬間を情感あふれる手法で描いています。

 

うーん、広島ファン、まじめです。わがタイガースだと、例の名作『なにがなんでもタイガース』ですからねえ。どうしてもお笑い方向に行くのは土地柄なんです。

 

ま、でも僕は広島には良い印象しかないです。まだ一回しか行ったことがないですけど、それも車で行きましたよ、町中カープですし、なにしろあのローソンが赤いし、ホテルで出会った広島ファンのひとたちは、僕らを「阪神さん」って、なんかじーんときましたよ、、、、、さん、ですよ、さん。台風通過で1試合中止になって、それでも球場は見に行こうかって、夫婦で散歩にでたら、フロントの女性が走っておっかけてきて「今日は試合中止ですう!」って息を切らして。。。。

 

広島にはよい思い出しかありません。旧球場もみました。なんか、こうカープの選手には「俺には野球しかない」みたいな一途さがあるように思います。はい。誉めすぎ?

 

いやあ、お立ち台でなんか面白いこと言わないといけない甲子園が僕には良いんですよ。しかし、良かったですよね、優勝。カープファンのみなさん、おめでとう。

 

あと4年後に我がタイガースは優勝するから。東京でオリンピック、大阪で日本シリーズじゃあ!って、僕は4年後生きているのでしょうか。とほほ。

 

日本シリーズでも、名勝負はカープがらみですよねえ。あの西武との死闘、とか、21球とか。今年も名勝負間違いなしです。野球ファンとしては楽しみです。はい。

『涼宮ハルヒの憂鬱』谷川流 著 いとうのいぢ イラスト

ライトノベルを読み出してしばらくたちますけど、有名どころは読んでいませんでした。このシリーズは色々なことの初めとされていましたので、興味深く読みました。

 

読みはじめて、あれ?なんだか普通の学園モノの話運びに意外な感じがしました。確かにしっかり書けていますし、それなりに面白いのですけど、爆発的な人気につながるとは思えない出だしなのです。

 

ところが、定型のはずの登場人物が「実は」と始まるあたりから異様な雰囲気になるんですね。なんだかいきなり何光年も先に蹴飛ばされてしまうという。これ、あまりに翔んでいるので、ここは笑う所なのだろうか?と考えてしまいました。

 

ハルヒの作り出した空間の話にいたっては、これは深刻に読むべき所なのだろうか?としばし考えてしまいました。なにしろ、文章のトーンが笑いのかけらもないものでしたから。

 

で、「白雪姫」。。。。。。ですか。。。。

 

この話って、いわゆるラブコメの王道パターンをハードSFで徹底的に解釈しきった、という、なんとも空前絶後な、ものだったのですねえ。立派なラブコメ批判にさえなっていますよ。すごい。。。。

 

つまり、これは「近所にちょっと買い物にゆく」のに、スペースシャトルを打ち上げるみたいな、そう、ライトノベルの誇張さえ、批評の射程に入っているのですね。

 

いやあ、おもしろかったです。だてにベストセラー、だてに一世風靡していないですねえ。

『ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る』森田季節 著 文倉十 イラスト

まさかの「ベネズエラ ビター」「プリンセス ビター まいす マイスウィート」の続編って、本当にそうですね。

 

タマシイビト、イケニエビトの終りなき物語。ですけど、今回は、記憶をめぐるサスペンスとなっています。

 

最初は正直ちょっとダルイ感じがしましたけど、最後、怒涛の展開に目が回りました。すばらしい。

 

人って、記憶でできているのでしょうか?はて。。。。

『武蔵くんと村山さんは付き合ってみた。』第一巻 なるあすく

奥手同志が付き合い始める、もちろん、すべて初めてのことゆえ、すべてがぎこちない、そしてすべてが新鮮。

 

このお話の白眉はなんといっても最初なのではないでしょうか。武蔵くんにからかわれたと思った村山さんが「私と付き合えって言ったら、付き合えるわけ?」と悪意をぶつけます。しかし、武蔵くんはそれを真っ向から受け止めるのですね。

 

まあ、その後のふたりの動揺ぶりがオカシイのですけど、村山さんの「Finじゃねーよ」の叫びが一番笑えました。そうですよねえ、物語っていうものは、変化しました、ってところで終りますけど、現実はその先の方が長いわけです。

 

歌は3分で終りますし、映画は90分で終りますけど、現実は終らないです。ときめくときも、気まずいときも、となりに彼、彼女がいる、そういうことですね。

 

そこからは生活だからねえ」とは我が妻の名言。僕は「そこからは根性の世界」。え?我慢の世界ではありませんよ。常に自分以外の人のことを考えているという状態が僕は幸せの正体なのではないかと思ってきましたし、実際そうだと思います。

 

ふたりとも、その状態ではないですか、最初から。よい、よい。

 

それにしても、やっぱり武蔵村山ですか。。。。いや、まさかとは思いましたけど、あのトンネルが出たときは爆笑しました。いやあ、世界初でしょ。みなさん、聖地ですから、ぜひ、行ってみてください。夏は涼しいからという理由で僕はよく行っていましたよ。好きですよ、あそこ。でもまあ、デートってのは(笑)武蔵村山はうどんもおいしいところ多いですけど、デートでうどんって、大丈夫ですか?女子のみなさんは。

 

残堀川(笑)。実際僕の家の前には空堀川ですよ。流域住民のみなさん、このまんがを応援しましょう。

 

もしかして武蔵村山のイベントにキャラクタが。。。とか。。。ありますんでしょうか。

 

うーん、武蔵村山の洋菓子店って?豆腐?まさか武蔵大和のあのお店まではこないだろうし、、、、、はて、、、、

 

なかなか舞台を知る流域住民には楽しいまんがです。はい。

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』中島 聡 著

あら、伝説の中島さん、本を出したのですね、と読みました。「Life is beautifull」はちょくちょく読ませて頂きました。こうした自己啓発本を出すような人とは思えなかったのですけど、と読みました。

 

なるほど、そうなんですよね、わかりました。

 

本は、ずっと時間の効率的な使い方を説いています。なるほどデス。確かにその通りの時間の使い方です。中島さんがそのノウハウから日本の企業文化批判にならないところが、中島さんの危機感を如実に現しているように思います。

 

もう、船は沈没している。「沈みゆくタイタニックのデッキで椅子を並べている」。めいめいの判断で逃げるしかない!ひとりでも、いいから気が付いてくれ、そんな声が聞えるのです。

 

僕の気のせいでしょうか?いえ、いえ、僕は中島さんの本をそういう風に「聞きました」。

 

僕もまだ生きています。現役世代のみなさんはなおのことです。中島さんのメッセージは深刻です。どうか、めいめいで、逃げ切ってください。

 

『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』大西 康之 著

山一證券の最後の処理を請け負った「しんがり」といい、なぜか会社の最後の本が気になる私です。最高意思決定の場に現実なるものはしばしば存在しない、特に負けているときには、ということでしょうか。

 

負けに不思議の負けはないそうです。そうですね、こうすれば勝てるという理論やら実践書は沢山あるようですけど、うまくいった人の後付けの理屈のような気が、あくまで気が、ですが、します。

 

対して負けは、負けた時点で時間が停止しますから、分析しやすいのですね、きっと。

 

色々な話が出てきますので、僕の感想もまた多岐にわたってしまうのですけど、あえてひとつ書くとすれば、

 

三洋もまた時代の勢いに乗っていた企業だったのかなあ、ということです。野球じゃないですけど、国の経済というのも、実は団体戦なのでしょう。うまく行くときには、何をやってもうまく行きますけど、だめになると、何をやってもだめになるようです。

 

野球で言えば、やはり巨人の黄金期、が勝利団体の見本なのでしょう。そこでいえば、三洋は「野武士軍団」的だったのかもしれません。今、阪急や近鉄のDNAは?なんて、、、話すだけ寂しいですね。そんな感じがします。

 

三洋のエフェクター向け「外部充電池」。これ、傑作です。これほどステージで役にたつものはないのじゃないかと思うのです。コードの取り回しからの解放って、ステージでの悲願だったわけですから。僕も持っています。でも、、、、

 

DEC。好きだったなあ。アルファ搭載のワークステーション、中古で何台も買いました。でも、、、、

 

僕らは、そう、買うだけではなく、株式で応援するという道もあるんですよね。その方がいい場合が多いような気がします。ここは潰れては困るなんて会社があったら、株で応援、ですね。

 

ただ、経営が、いまいちだど、その応援も届かないですし、規模が大きい会社は貧乏人が応援するって感じでもないでしょうし。

 

さて、三洋のDNAは確実に僕らの明日に関係したところで、再び姿を現す感じがしますね。

 

しかし、、、10万人。。。。。経営陣の責任は大きいですね。。。。。