海辺の風景

海野さだゆきブログ

『ブギ─ポップは笑わない』上遠野浩平 著 緒方剛志 イラスト

この作品も有名どころですよね。ホラーっていうべきなんでしょうか。不気味さとか、閉鎖的な空間で行われる息苦しさとか、なかなか読ませますよね。そして、異常心理へのアプローチが新しかったのでしょうか。

 

話は登場人物の視点で描かれ、その視点が移動するので、ちょっと分かりにくい感じにはなりますけど、それがまた謎を演出するんですよね。面白かったです。

 

僕があれ?と思ったのは、これって、いわゆる学園異能バトルの範疇を越えてはいないのねってことです。遠くで「社会」、つまり大人たちの影が見えかくれするのですけど、登場人物たちはそこへ問題意識をもってゆかないのですね。

 

宇宙規模の事件も学園内でおさまる。これって、『涼宮』もそうなんですけど、ライトノベルの無理のひとつですね。お約束と言った方が良いのかもしれません。

 

エログロってまあ学園から真っ先に排除されるであろう要素がこの作品では多めですけど、それによって学園自体が崩壊したりはしない程度、生徒が防衛戦をやるんですね。『ハレンチ学園』最終回をどう考えるかなあ、なんて老人は思ったりしますけど。

 

そのあたり、魔法少女モノでなんとかアプローチした作品もありますね。僕はそういうあがきが好きですね。無理な設定で作られた作品で感動してしまった自分のけりをつけるために、その設定自体に全力で立ち向かう。うん、それはよいですし、僕もそうしたことを少しはやってきたつもりです。

 

魅力的なキャラクタがまだ、ちょっとしか活躍していないで終っていまして、この作品、続くんですね、沢山。

 

まあ、遠い潮鳴りのような「大人たち」が見えてくる『イリヤの空、UFOの夏』を思い出したりしてました。たぶん続巻では語られるのでしょうね。

 

乾いた描写と云い、なかなか面白かったです。