朝井さんの小説を読んでみたかったのです。映画になったものかな、と思ったのですけど、短めだったこれを選びました。
読みはじめて後悔しました。僕は子供もの、とか施設ものが苦手なのです。すぐにページを閉じて、かなりの時間放置していました。
色んな本を読み終え、電子書籍本棚が整理されて来て、埋もれていたこの本の表紙を見ることが多くなり、せっかくだからと決断して読みまじめました。
いざ読み始めると、文章の軽快さ、生き生きとした描写に引き込まれて、ずんずん読み進みました。どんな魔法なのか、この小説には子供の時間が流れているのです。そして子供達の生き生きしていること!。すごい文章力です。
さて、最後に作者は唐突に語り出します。変らないヤツは変らない。だからいつまでも同じところに我慢している必要なんてない、と。
加川良さんの『教訓』が僕には聴えるようでした。作者には同じ様な静かなでもガンとした怒りがあるように思いました。子供達にこれまでと同じくらいの希望がこの先にあるのかは事実として語るべき事ではないでしょう。
ジェリー ガルシアが言ったそうです。若い人たちがウッドストックの時代を賛美して、あの時代に行きたいと彼に言った時
「ウッドストックだと?あんなクソな時代にか?」
僕も十代から子供に戻りたいとか、あの時に戻りたいとか、若い頃に戻りたいとか言う言葉を聞くと、同じように、でもこころの中で吐き捨てていました。
希望は未来に、いえ現在にしかないからです。