海辺の風景

海野さだゆきブログ

『どるから』石井和義 原作 龍造寺慶 脚本 ハナムラ 漫画

男女入れ替わり物は沢山あります。かわいい女の子の中身がオッサンというものもあります。しかし、この場合オッサンがあの石井館長なのです。いやあ、こんな濃厚な中身、ありえません(笑)

 

そして、その難題に挑んだのはハナムラさん。そう、美人編集者とのやりとりをせつなくもどこかおかしく、哀しく描いたあの『ハナムラさんじゅっさい』(僕、ちゃんと購入してます、はい)のハナムラさんです。

 

「この男は実在する」って、『空手バカ一代』じゃないですか。。。。

 

しかしまあ、館長、いきなり自分を死なせてしまって、いいんですか、、、、、。これがギャグとかフィクションとか、思えない、、、「まだ空手を裏切ったままやんか」といういまわの際の言葉はグサリと刺さります。

 

しかし、まあ、立ったまま死んでしまうなんて、『侍ジャイアンツ』ですか。かと思うと「なんじゃこりゃあ」の絶叫って、松田優作ですか。。。。。。

 

そうです、あちこちにオールドファンを泣かせるオマージュがちりばめてあります。いいなあ、心地好いです。

 

館長のキャラクタゆえでしょうか、ギャグがあちこちにありますが、爆笑した直後に厳しい現実描写が突きつけられ、また、その事態への館長のまっすぐな挑戦的姿勢にグッと来ます。

 

いやまあ、流石というか、女子高生の体になっても、館長、エロの微塵もありません。気になるのは「格闘家としての筋肉の付き方」なんですから。筋肉(笑)。

 

この高低差激し過ぎる物語を絵にするのは滅茶苦茶難しいと思います。ギャグはギャグ、シリアスはシリアス、きっちり描けるハナムラさんは流石です。

 

ハナムラさんじゅっさい』で、なかなか浮上できない状況をありのままに描いていたハナムラさん、ちょっと心配だったんです。あのまま終っちゃうのかなあ、、、これだけ力があるんだから、チャンスはあるよなあ、、、と、、、

 

良かったですね、ハナムラさん。独特の色っぽい線は健在、微妙な表情、難しい心理場面を描ける筆力、十分発揮されています。

 

「世にでない才能などない」とは故米長永世棋聖の言葉ですが、絶対そうです。

 

話は自殺してしまった女子高生、追い詰められ食い詰めの格闘家、どん底の出口はあるのか?「明日はどっちだ」です。

 

梶原先生の『空手バカ一代』を始め、格闘技漫画好き、再び立ち上がろうとする人間の話が好き、そんな人に読んで欲しい、絶対ぜったいのお勧めです。