海辺の風景

海野さだゆきブログ

『地雷屋 JIRAIYA ~アフガニスタン編~ 1巻』竿尾悟 著

戦争が敵味方に別れてドンパチやる、なんて想像しかできない人はぜひこの作品を読んで頂きたいです。

 

戦争とはもうひとつの「国内政治」なのですね、

 

「戦後の混乱の中じゃ、すべてが金になる」

 

これは「戦争はすべてが金になる」と言い換えてもよいと思います。おそらく作者はいたずらに戦争反対作品「だけ」になるのを避けているからこういう表現になるのだと思います。よいバランス感覚だと思います。

 

戦争に関して僕がであったよくある風景というのは「兵士に給料が支払われる」ということが想像の外という人たちでした。「兵隊って給料出るの?」戦争反対の人は、徴兵という強制にとらわれ、愛国を熱心に説く人は見返りをもとめない精神にとらわれ、お金のことにおもい至らない感じがありました。僕の狭い経験のなかだけでしょうか、わかりませんが。

 

戦争といえどもものを買ったり、売ったりすることから逃れられるわけではないですから、戦争も経済活動なんですね。で、戦争というのは、宣戦布告から始まるわけでもありませんし、どちらかが降伏調印をして終るわけでもありません。

 

戦争に投入された資本が動く限り戦争は続くのです。

 

ということは?一度でも戦争をしたところは、戦争中が続くわけですね。

 

地雷処理という視点はとても僕には新鮮です。先頃日本でも不発弾処理の費用を地主が全額負担はおかしいのではないのか、という訴訟がおこりましたね。日本はいまだにアメリカ軍の爆撃を受けている、と言ってよいのではないでしょうか。その爆発が留保されていただけなのですから。その殺傷の意図は地中で眠っていただけで、死んではいなかったのですから。

 

地雷はそのいつまでも眠り続ける殺意を形にしたものですね。それにどう対するのか、この作品では悪役に描かれている方にもそれなりの正当性が見いだせたりするので、そう簡単なことではないのはわかってもらえるのではないでしょうか。

 

なかなかの豪速球、よい作品だと思います。