武満徹さんの「海へ」は海の英語「SEA」の表記をそのまま音階として扱っているとか、です。ちょっと記憶があやふやなのですけど、Sは「シ」Eは「ミ」Aは「ラ」としてその三つの音を主題にするというような方法です。
これは実は西洋音楽の「どまんなか」なのかもしれません。そもそも「ドレミファソラシド」がどうしてそういう風に呼ばれるようになったのかについて、「バプテスティマのヨハネ讃歌」のラテン語の歌詞をそのままあてはめたという説もあるくらいですから。
この方法を僕も採用したことがあります。もちろん、それだけでは曲は成り立ちません。とは言え、発想の一部分ではありますけど、結構強力です。
僕は以前、知人の出産祝いに曲を贈りました。出産とは何か、自分も立ち会い出産を経験しましたからか、ある時突然「出産とはドミナントモーション」だと思いつき、あわてて持っていた紙がレシートしかなかったので、そこに音譜を書きなぐったのでした。
出産時、なにかこう「波」があるそうです。陣痛には波があるんですね。それを「有義波高と有義波周期」とか3ー2ー5周期とか色々な説を拝借して、最初のモティーフを作りました。
これは「見立て」といってもよいかと思います。日本の文化のひとつですね。「借景」と言ってもよいかと思います。
表現することが具体的であれば抽象的に、抽象的ならば具体的に、そんな風にまとめてしまってよいかと思います。