海辺の風景

海野さだゆきブログ

骨ストレッチあれこれ

骨ストレッチという技術についてちょっとあれこれやってみました。参考にしたのは『「筋肉」よりも「骨を使え!』甲野善紀 松村卓、『ゆるめる力 骨ストレッチ』松村卓、『骨ストレッチランニング 世界一ラクに走れる!』松村卓の三冊です。

 

結論から言えば、前提さえ理解していれば十分に効果はある、でしょう。

 

以前、サブスリーを目指すという人にアドバイスを求められた話をしました。そもそも僕に聞いてくるという時点で間違っていますし、からかい半分で聞いてきたのだと思いますが。そのときにも言いましたけど、問題解決は「そもそも」を定義することができれば解決策は見つかる、ということです。

 

あらゆる技術、その実現のための道具は、当たり前ですけど、成立条件があります。前提があるんです。骨ストレッチは考案者の方がどういう人なのかが技術の前提となっています。本を良く読むと分かりますけど。

 

1、中学高校大学と陸上競技、短距離の選手だった

2、100mを10秒台で走れる選手だった

3、記録が伸び悩んでいたところで古武道にであった

 

つまり、この方はアスリートなんです。それも直進専用。それも10秒台の選手。これ、一般的な人からすればとんでもない身体能力ですよね。10年は競技としての短距離走に打ち込んでいたわけですから、毎日上位レベルのトレーニングを積み重ねていった、そういう方が発見した、書いた、という事が前提です

 

道具や技術には適用範囲というものがあります。重登山靴で通勤する人もいないですし、短距離用のスパイクで山登りをするひともいません。技術も適用範囲はあります。まったくの無前提というのはありえません。

 

「最強格闘技」の技術をもっていても、「多数の素人がアサルトライフルを持っている」戦場でその格闘技で戦うことはないでしょう。

 

骨ストレッチは競技者レベルの人が更なる記録更新を目指してたどりついた技術、ということでしょう。『骨ストレッチランニング』に体験者の声がいくつもあがっていますが、全部競技者レベルの人たちですよね。それも「直進専用」の陸上の方が多いのは著者が陸上競技者だったからという以上の理由があると思います。

 

簡単に言えば、従来日本の学校レベルで行われていた陸上競技のトレーニングに一番欠ていた視点から発明、発見された技術ということでしょう。

 

では、一般の人に役に立たないのか、といえば、そんなことはないと思います。ただし、条件を満たしていれば、です。

 

話はエレキギターになります。Youtubeで教則動画を沢山公開しているHidenoriさんという方がいます。彼は非常に優れたコーチング技術を持っていると思います。「対面指導でないと何も教えられない」とは彼のよく言うことですが、全くその通りですし、それをはっきり明言している時点で十分優秀です。この国のコーチングレベルからすれば、です。

 

彼はある時に、ある質問に答えていました。やりとりを要約するとこうです。

 

「どうやったら指をリラックスできますか?」

「あなたが指をリラックスすべきレベルなのか、そもそも指の筋肉を鍛えるべきレベルなのかが分からないので、是非個別レッスン受けてください」

 

これを商売丸出しという人がいましたけど、これ、身体を使うトレーニングの真理を言い当てている、金言です。ちょっと覚えておいてください。

 

さて、骨ストレッチですが、著者は二言目には「ゆるめる」「リラックス」「脱力」です。競技経験談では、スタートに遅れてあきらめ半分で走ったらそのときに自己ベストが出た、という話を例にして、脱力こそパフォーマンスを上げると説いています。

 

そうです。骨ストレッチは脱力の技術なんですね。

 

そこで、なるほどと思わないでください。Hidenoriさんの言を思い出してください。

 

そもそも脱力という前に、抜くだけの力がついているのか?です。そもそもろくに筋力もついていないのならば、動けるだけの筋肉をつけるのが先ではないでしょうか。

 

ゆるめるべき筋肉がそもそもついていないひとが、何をゆるめるのでしょうか。著者や体験談を寄せている方々はすでに競技レベルの筋力、身体能力があるわけです。その方々は脱力技術が足りていないために、体の動きが阻害されていたわけですから、効果絶大でしょう。

 

競技にもよるでしょうけど、ある程度の競技力がある場合にのみ有効でしょう。運動強度が何かくらい知っていて、それを意識してトレーニングをしている人ならば「一般の人」でも十分に有効だと思います。

 

はい、骨ストレッチは脱力技術、そもそもそれぞれの目的達成に十分な力がない人はまずは力をつけるトレーニングをすべきでしょう。

 

で、僕ですか?やってますよ、なかなか面白いと思います。AISとあんまり思想的には変らないと思います。色々なポーズが自然と呼吸と連動する辺りは古武道から学んだことなのかなあ、と想像しますが、そこのポイントだけでもかなり高得点の技術だと思います。