海辺の風景

海野さだゆきブログ

『しんがり』清武英利 著

山一證券「自主廃業」の騒動の中、会社の行った不正の真相究明と、会社の整理という敗戦処理を引き受けた社員たちがいました。その彼らの軌跡を追ったドキュメンタリ。

 

社員が7万7千人。そんな大企業には役員も沢山いたのですね。それぞれにそれぞれの「山一」があった。そう思います。ですから、敗戦処理をした人たちのなかにも色々な「山一」があったようです。

 

清武さんは「しんがり」という言葉を使っています。それは彼らへの敬意からでしょう。思い出すのはワインバーグ先生の語った、お父さんから先生への助言。うろ覚えですけど

 

会社には二種類の人間がいる。偉くなりたい奴と仕事がしたい奴だ。お前は仕事をする人間になれ。

 

これを愚かな僕はこう読み替えています。

 

会社には二種類の人間がいる。会社に残り続ける能力の高い奴と仕事ができる奴だ。仕事ができる奴は早くに辞めて行き、残り続ける能力だけが高い奴ばかりになって会社は滅びる。

 

山一の最後の12人は仕事がしたかった人たちだったのだと思います。もう会社はありません。残り続ける能力はまったくいらないのです。仕事だけがそこにはありました。そして仕事をしたいひとだけが。

 

えてして仕事がしたい人は残り続けることに興味がなく、灰をかぶることが多いです。そういう人が「お天道様がみている」だけなのは間違いだと思います。あの山一にこういう人たちがいた、それは僕には胸打つことですけど、複雑な気持にもさせます。

 

転がり続けろ!そう、彼らはロックな人たち。僕も数え切れないほど転職しました。転がり続け、ロックンローラーとしてじじいになりました。僕はそれには実は満足しています。そして思い出せるのは仕事をしたい人ばかりです。いつも思っていました。彼らだけ集めて仕事ができたらなあ、と。山一の「しんがり」は一瞬ですが、そういう集まりになったのですね。だからいつまでも確かな場所として彼らの中に残ったのですね。