海辺の風景

海野さだゆきブログ

『健脚商売』伊勢華子 著 中央口論新社

タイトルはもちろん「剣客商売」にかけていますね。女子競輪選手のノンフィクションです。スポーツは筋書きのないドラマ、といいますけど、ここでは競技そのものではなく、彼女たちがその競技に至るまでのドラマが語られています。

 

話は戦後まもないころにあった女子競輪の選手への取材から始まります。もう高齢になった彼女たちですけど、非常に闊達。敗戦後にあった女性たちの「さあこれからだ」という熱い空気が、まだ彼女たちとともにそこにはあります。

 

それから幾とせ、復活した女子競輪の第一期生たちもまた、その「さあこれからだ」という熱い空気をまとっています。一見、スポーツエリートのようにみえてしまう彼女たちですが、洗練されたような道筋はひとつとしてありません。もがいて、もがいて、たどり着いた場所、それが競輪だったのです。

 

僕は西武園で、一度だけガールズケイリンを観戦しました。男子とは違う国際ルールに近い形のレースはスプリントに近く、実力差があると「ギャンブル」としては成り立たないものになるな、と思いました。

 

実際、戦後間もなく開始された女子競輪は選手の実力差が大きく、「ギャンブル」としての面白味が少なくて、やがて尻すぼみになり、ある日突然廃止されてしまったのでした。

 

競輪自体が下り坂というなか、起爆剤になるためにも、彼女たちの活躍は必要です。それには日本ではオリンピックでメダル、という道がほとんど唯一の道です。女子サッカーしかり、女子ラグビーしかり、女子バスケットしかり。女子バレーボールに続く人気競技はメダルというハードル故になかなか出てきていません。

 

僕はもっとガールズみたいのですけど、休みと日程が合わずに観戦できていません。せいぜい、ジャージを購入とかグッズでしか貢献できていないです。

 

僕は競輪にギャンブルだからという抵抗感はありません。自転車好きということもありますけど、プロスポーツとしてすごい、と思うからです。やはりライブ、生で観ないとそれは感じられないことなので、日本独自のプロスポーツというくくりで、是非見に行ってほしいと思います。賭けなくても、100円とか50円とかの入場料で入れるのです。特別観覧席も1000円とか2000円。飲食も充実していますし、お勧めです。

 

話は本に戻ります。どんな人も話としてまとめれば、みんなすごい人生を送っている、そう思える、お腹にずっしり来る、いい著作です。絶対のお勧め。