当時レコードは下宿の近く都立大学駅近くの小さなレコード屋で買っていました。あるとき、ふと目についたすてきなジャケット。帯をみると豪華ミュージシャンが山程クレジットされていました。どういう歌い手なのか聴いたことはありませんでしたけど、このメンバーならば間違いないと確信、購入しました。
このアルバムは僕の最愛聴盤となりました。当時YMOは大好きでしたけど、そのサウンドを歌ものにつぎ込むとこんな魔法みたいな作品ができるのかと唖然としました。
クールに響くパルス音からしてもう鳥肌が立ちました。そしてその世界観。これぞ都会の音楽。貧乏学生だった僕にも幻のように、映画のシーンのように情景が浮かび上がりました。
そして「風の道」。劇的なストリングス。深い深い歌唱。歌われる情景が大人の風景。
いつか、いつか、こんな作品を作ってみたい。それが当時バンド活動をやめ、映画音楽、それもアマチュア映画の音楽担当になろうと、勉強を始めた僕は決心したのでした。
彼女は基本的にはレコーディングアーティストでしたけど、少ない回数ですけどライブもありました。行きましたよ。すばらしい歌声、そしてバックもすばらしい演奏。これぞ!というものでした。
知り合った女性に、どうしてもこれを聴いて欲しくて、最初のデートでテープにダビングして渡しました。「こんな音楽聴いたことがない。私が聴いていたのはなんだったのかしらって思いました」。そう感想を手紙にしてくれた女性は僕の伴侶となりました。
ラジさんはやがて活動をやめてしまいます。とても残念でした。
なぜかこの大傑作アルバムはいつまでたってもCDにならず、僕はLPからの音源を聴き続けていました。
いつのまに、知りませんでした。まとめて5枚CDになっていたんですね。それもリマスター、吉田保さんのリマスターで!。そしてうれしいことに、ご本人、ユキヒロさん、プロデューサ高久さん、エンジニア吉田さんたちへのインタビューがおまけとしてあるのです。これがファンにはものすごくうれしかった。
ラジオ番組から再評価が始まったんですか。へー。世の中捨てたものじゃないですね。
30年以上まった甲斐がありました。再発ということがいかにたいへんなのかは「ユンカース」DVD化運動を手伝って身にしてみてわかっています。そして、情熱あるプロデューサさんは時間にまけない傑作を残すんだということも。
やっぱ死ぬ前にやることが僕にはまだあるみたいです。