海辺の風景

海野さだゆきブログ

「GARM WARS The Last Druid」押井守監督 TOHOシネマズ日本橋

東京国際映画祭。なんと世界初公開。なんとマスコミ取材を除けば、あ、監督とか除けば400人に満たない観客。押井さんの遺作、と思っています。間違いなくハードSFファンだったという、たぶん中二の頃、自分にかなり忠実に作った剛速球。でも、配給は決まっていない。映倫マークもない。果たして日本ロードショーはあるのでしょうか。

 

デジタルエンジンで作ったパイロットフィルムしかなかった、幻の作品。カナダで作っているというのは知ってたけど、完成したとか、上映があるとか全く知らなかった。チケットをとっておいてくれた友人のお陰で見ることができた、幸運だったのだ。

 

挨拶には押井さんとプロデューサの鵜飼さん。久しぶりに見た押井さんは、なんというか、油っ気が抜けていた。空手をやっている影響なのか、そもそもそういう境地なんだろうか、たぶん後者。

 

どういう境地?。自分に正直、あるがまま。それが武道だから。

 

ライトノベルを読みまくっている僕は「中二病」という言葉をよく見聞きする。でも当の中二は中二病をやっていられる余裕があるのだろうか。ないと思う。現在中二が中二病をやっていられないという世の中だと認識している。それは物凄い不幸なことだし、中二が安心して中二病をやっていられない状況を作り出している僕らじじいの罪は重い。

 

映画はハードSFだ。ハードSFというだけで日本ではハードルが高くなってしまう。自分の生きている世界とは全く違う原理で動いている世界が舞台、という物語に慣れていない。出てくる言葉、状況、心理状態、すべて今現在の日本とは無縁である。そういう異世界への態度がそもそもない日本である。

 

画面はすごい質感で満ちている。物語は説明がない分、速度も密度も高い。あとは観客がそれをそれとして、つまり「分からなくてもいい」という態度をとれるかどうかにかかっている。映画とは違う世界を体験できるものなのだ、そういう、もともと映画とはそういうびっくり箱の、見せ物だった、という地点に立てるかどうか、観客が試されてしまう。

 

なにしろ正解がある、世界は理解できる、そういう精神風土がある日本だから。。。。でも、本当にそうなの?

 

圧倒的な質感で観客は巻き込まれる、、、、はずだ。ここでいちいち「それって何?」とか立ち止まっていては、映画に置いていかれてしまう。そういう意味では、現実でも「巻き込まれ」感の強いだろう中二の皆さんこそ、この映画を「考えるな、感じろ」で正しく鑑賞できる気がする。

 

押井さんが中二病丸出しで疾走したのも、そういう現実の中二の皆さんにインパクトを与えるためではないのかなあ、と思った。じじいが、世界に名を轟かせたじじいが、全力で中二病をやっているのだ。是非是非若い、中二病の人に観て欲しい。

 

映画は苛酷な展開をするが、あくまで前向きである。え?なんでそう思うのかって?だから「感じろ」デスよ。

 

興行的にはどうなのかなあ。説明過多な作品で甘やかされている、はっきりいって「馬鹿にされている」観客だらけの日本ではロードショーは危うい。ないかも知れない。ゲームのムービーパートっていう使い方も出来るだろうから、ゲームの企画が、バンダイナムコだし、あるのならば、資金的に満たされて、あるかも知れない。そういう感じだ。

 

役者さんは演技しているし、世界観は細部に至るまで作り込まれているし、映画としてのインパクトは絶大だけど。

 

願わくば、中二の人がみて、「なんかしんねーけど、かっけー、俺もこんなの作ってみたい」と思って欲しいなあ、そういう映画でした。