剣道漫画です。久しぶりですね剣道漫画は。『六三四の剣』以来でしょう。剣豪漫画ではなく、剣道です。ジャンルとしては少数派でしょうか。
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今時のスポーツ漫画らしく、主人公以下全員女子です。「かわい子ちゃん最低5人出しておけ」(高橋良輔監督)ですね。一体何人出てくるのでしょう。
少年漫画らしく、全員天才です。そしてライバルの強さはひたすらインフレーションを起こして行きます。少年漫画の宿命ですが、このままインフレが続きますと、10巻あたりでは「竹刀で地球をまっぷたつ」になりかねません。
え?ちっとも誉めていない?いえいえ、僕は一気に今刊行されている3巻購入、おまけに続巻自動購入を即決しました。ものすごく気に入っていますし、はやく続きが読みたいぞー0ーと思っているのです。
傍若無人、おまけに理不尽に強く、おまけに美人でプロポーション抜群という「ねーよ帝国主義」のお嬢様が県強豪校に入ってくる波乱から話は始まります。
そして、体格にも才能にも恵まれず、中学時代、強豪校で苦酸をなめ、剣道をあきらめかけさえした主人公。そのふたりの出会いが化学変化を起します。
そうです、こうした話運びはよくあるパターンです。もちろん、「ご存じ」をちゃんとやれるというのは並大抵のことではありません。僕はでも、そのお約束をきちんと魅せられる力量で驚いたわけではありません。
この漫画、試合がすざまじいのです。超能力飛び交う?いえ、いえ、もっともっと深いところを描いているのです。
武道の試合は一対一です。経験者は「処刑場に連れ出されるような」と言いますけど、それは「はじめ」までの話でしょう。
試合は「対話能力の差で決まる」が、僕の考えです。いわゆるスポーツ武道で「トレーニング」した人は、「ああ来ればこう受ける」「こう受けたらこう反撃する」みたいな「段取り」をやってしまいますし、その段取りのうまさが「うまさ」だったりします。
でも、武道、いえ、「武術」ってサバイバル技術です。自分が生き残るために「段取り」は、はっきり言って邪魔でしかないです。相手は常に「自分の外にいる」わけで、想像では捉えられないのです。
この漫画のすごいところは、試合中に繰り広げられる「相手への感応力」だけが描かれているところです。
主人公の「大リーグボール一号」がその象徴でしょう。件のお嬢様が感嘆し、惚れ込んでしまったのは、むべなるかな、です。相手が一見どんなにクソなヤツであっても、相手を「感応」すれば、まったく違う人間が見えてくるのです。
それを作者は「心」と言っているように思います。相手の「心」を感応し、自らも「心」を打ち出す。そんな試合がここでは描かれています。素晴らしい。
少年青年漫画のお約束で、女子の露出度が上がったりしますけど、いえいえ、ぜんぜんいやらしくないです。あれ、それは困る部分ですか?まあ、僕は老人なので(笑)。
あ、作者はおそらくは男性でしょうけど、ちゃんと「女性の線」が描けるのは素晴らしいです。わりと絵が立つ人でも、女性がどうにも「男性の線」で描かれてしまったりしている場合がほとんどなので、これ、そう、この部分こそ「色っぽい」のです、諸君、露出度の問題ではないです、はい。
で、そうした物理的な露出より、「心」の露出にびんびん来ます。すばらしい。
「剣鬼」ならぬ「剣姫」ですか、よいタイトルです。はい。