海辺の風景

海野さだゆきブログ

『コンビニDMZ』竿尾 悟 著

三勢力が拮抗する戦場のまさにそのど真ん中にコンビニが営業中という、途方もないと思える設定のまんがです。しかし、この設定、戦争の本質をついているように思うのです。

 

基本はギャグです。戦争映画、戦争小説などなど、知っていると思わず笑ってしまう展開です。「八月の雷鳴」には思わず吹き出してしまいました、はい。

 

秀逸なのはなんといっても不死身の営業魂、店長です。『笑うせえるすまん』化する、毎度お馴染のオチで、笑わせてもらっています。店員さんも個性豊かでグッド!ゲストのみなさんも、どこかでみたような(笑)突出した方々で笑わせてもらっています。

 

でも、戦場描写は容赦ないです。画面は死し累々。そのあたり、この作者は勘違いしてはいません。

 

戦場にコンビニ、という設定が僕には「現実離れ」とは思わないのです。むしろ本質を突いていると思います。

 

古くは野間ー大西論争じゃないですけど、戦争や戦場を「日常から遠く離れた狂気の世界」と捕らえるのは、欺瞞だとさえ思います。むしろ日常を凝縮した形、ではないかと考えています。

 

兵隊はその国(あるいは地域)を表す服装をまとい、その国の特徴的な食事をし、その国の特徴的な命令系統で、その国の特徴的な作戦行動をとります。戦闘行為ゆえに日常にある無駄が削ぎ落とされて、剥き出しのその国の芯みたいなものが出てくるように見えるのです。

 

つまり、日常が極端な形でそこにあるわけです。戦争って、その日常をあっちの国とこっちの国がどうしても譲らないという姿勢で激しく接触することなのではないでしょうか。

 

ならば、日常の「便利さ」を標榜するコンビニって、戦争と非常に親和性があるんです。ロジスティックスの極限みたいな形態ですし。現場のデータから本部がリアルタイムで「指揮」するっていう形も他のどんな商売よりも極端です。

 

戦争とコンビニ。。。。もう押井さんに実写でやってもらうしかないです。

 

世紀の大傑作まんが、と呼ばせてもらいます。はい。