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海辺の風景

海野さだゆきブログ

「セッション」デイミアン・チャゼル監督

エライもの観ちゃったなあ、というのが最初の感想でした。これ、男同士のどつきあいの話です。一応音楽が題材になっていますけど、スポーツであっても俳句であってもよいって種類ですね、それがマイナーな分野であれば。

 

これ、ルサンチマン映画ですね。

 

挫折で心が屈折してしまった男が、世間知らずの若者をいじめて潰してやるぜ、っていう態度で「指導」する。潰された若者は楽器を捨てるんですけど、指導した男の方もひどいやり方が問題になって学校を首になっていたんですね。偶然町でふたりは再会、指導した男は「てめーのせいで首になった」と逆恨み。その怨念をなんとステージ上で晴そうとするんですねえ。いやあ、しつこい。

 

ところがどっこい、若者はそのステージ上で開き直って、「俺様」演奏全開バリバリをやって、元指導者を完全に無視、逆に「てめーのせいで子供のころからの夢を潰された」と憎悪を演奏にぶつけるんです。その憎悪の迫力に、元指導者もたじろいでしまう。

 

いやあ、なんちゅう話でしょう。日本だと修行にみえる方がいくらでもいるでしょうし、マイナーな分野ゆえに、余計にそう思えてしまうかもしれないです。日本でブラバンの指導者にこういうエキセントリックな人がちらほらいるらしく、その強引な指導ゆえに、夏のコンテストが終ると退部するってことがあるらしいくて、、、、、。

 

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エリックミヤシロさんのこの訴えは非常に重要で、もし音楽を好きであるならば、ぜひ全文をよんでいただきたいと思います。

 

僕は、楽しくないっていう状態になったら、もうそれは音楽ではない別の何かになっている、と思います。ただのハードロック少年だった僕はひょうんなことから合唱部創設メンバーになり、初代部長になりました。そこで気をつかったのは、楽しくできるかどうか、でした。そのせいで自分の好みが突出してえこひいきになったところはあったのですけど、まちがいなく、でも、やっぱり楽しくやることだけは考えていました。

 

僕は病院が本籍地だと親から言われてしまうような子供でした。その病室の日々を助けてくれたのは音楽でした。僕の魂にはそれが刻み込まれています。自分が弱っていたからなのか、「本物」はちがうように聴えることを知りました。

 

合唱部の顧問には新卒の先生がなってくれました。声楽を専攻した先生には僕らの音程はしょーもないレベルで、厳しい言葉ももらいましたけど、先生の「本物」ぶりはわかっていましたので、がんばろーぜって喰らい付いて行きました。

 

緊張する部員を笑わせるのが、だから僕の役目でした。しばらくすると技術的に追い付いてきて、余計に楽しくなるってこともしりました。ハードロック少年には1曲を半年一年毎日練習するってこと自体が新鮮な体験でした。

 

とまれ、この映画での「指導」は潰しにかかっているだけ、というのは社会経験つんだおっさんにはすぐに分かりました。いるよね、こういうエバリ野郎って。実際、ジャズバーで演奏しているコイツの演奏がしょぼいです。。。。やれやれ。自己愛だけはエベレストより高いのね。

 

でも、主人公はこの指導者の呪縛から逃れられなかったのですね。「こいつおかしい」って見捨てれば良いのに。でも、そういう風にしかけてくるのがルサンチマン野郎の手口なんですね。若くて自意識と評価が不安定な場合はひっかかります、その手口に。

 

でもどうなんでしょう。主人公に「本物」体験があったら、「こいつ偽物だ」って分かった気がするんですけど。。。。。。アメリカには素晴らしいドラマーが沢山いますし、彼らはワークショップをやっていますよね。。。。。僕の大好きなビソネットさんも。そういう「本物」体験をまずはしたらどうだったのでしょう。ましてやプロを目指すのならば、絶対に必要ですよね。。。。。。

 

というわけで、音楽は背景、ルサンチマンが火花を散らす、すごい「暴力」映画でした。