海辺の風景

海野さだゆきブログ

偽札二題「鳩の撃退法」佐藤正午、「万能鑑定士Q」松岡圭祐

「鳩の撃退法」佐藤正午

過去に文学賞も受賞し、ヒット作もあった主人公は、いまやデリヘルの運転手。知り合いの古本屋が残したバッグを貰い受けるが、その中には三千万円を超える現金が入っていた。

 

失敗しました。僕はヤクザとか暴力とか満載の話は苦手なんです。そして、この主人公の語りがイライラさせられること、させられること。そして虚実ない交ぜ。すっかり作者の術中にはまりました。

 

がまんして(笑)読み進みますと、「あっそうなのか!」という大きな驚きがあり、そのえさにつられて、また読んでしまうのですね。

 

しかーし、しかし僕はあと20ページというところで嫌気がさして、読み飛ばしてしまいました。こういう人間だから成功しないんですね(笑)。みごとに撃退されてしまいました。

 

「万能鑑定士Q」松岡圭祐

「千里眼シリーズ」ファンでありました。全部読みました。「鳩の撃退法」でもやもやしてしまった僕は、口直しだと思って久しぶりに松岡作品を読みました。そうしたら、こっちも偽札ものじゃないですか。がっくり。

 

「千里眼シリーズ」同様、スーパーレディが活躍です。この話は彼女の「前歴」から始まります。いかにして凄腕になったのか、の話は興味深いことを沢山含んでいます。

 

なるほど。これです。松岡作品には色々な蘊蓄が満載です。なるほどねえ、という発見が読み進む原動力になります。主人公の判断は常に超高速ですから、爽快感があります。

 

結末には既視感がありました。「千里眼シリーズ」を読み終えた人ならば思い当たることがあるでしょう。あれがあまりに救いがない話だったので、こちらではこうなったのかなあ、と思いました。

 

口直しにはなったかといえば、どうでしょうか。もうちょっとすかっとしたかったかなあ、ぜいたくですけど。

 

 

野球二題「そら、そうよ」岡田彰布、「ボディブレイン」下柳剛

 

「そら、そうよ」岡田彰布

岡田さんの本は2冊目。当時の阪神は考え努力する主力ばかりのチームだったので、岡田選手もその中で多くを得た、と思いたい。でも彼はオリックスでの指導者生活で本当に変ったと思います。

 

本には繰り返しオリックスフロントの不備失敗が出てきます。彼はそれでもチームを率いる点でのみふんばり、選手を育てて来ました。できることじゃないです。環境のせいにしたら負け、というのは彼のプロとしての矜持ですね。

 

これを読んでやっと、口直しになりました(笑)

 

「ボディ ブレイン」下柳 剛

 

え?あの下柳の本?どうせ生臭いビジネス本じゃないのかな、と思ったら、とんでもない人が帯に言葉を寄せています。サッカー日本代表を率いた、それも事故的に、岡田監督の言葉です。これはただごとじゃない、と思って取り寄せました。

 

勝ちたい、野球が好き、試合がしたい。動機は実に単純明快。人間その一本でここまでの人生が送れるものなんですね。すごいです。

 

いえ、言い方が悪いですね。好きだ、やりたい、という気持を抱いた自分を信じて、その一本の線に乗るように色々なことをやってゆく、そういう冒険が人生なんですね。学びました。残りの人生、下柳選手に学んだことでやってゆこうと思いました。

 

内容はただの説教とは違います。僕がコンピュータを学ぶ過程でわかったことは、「俺はこうして、こうなった」と書け、です。見事にそうなっています。それに、普通の人にできないことが一切ない。すべて明日にもできることです。これがすごい。

 

んなあ、こと他でも書いてアルじゃないか。いえ、違いは大きいです。学問的とかの理由で書いているわけでも、ビジネス的にうまくいったから書いているわけでもなく、好きだから書いているのです。この違いはあまりに大きい。

 

引退したときの下柳はこう言っていました。「これでもう、はあはあぜいぜいしなくて済むのか、と思った」。好きな事ではあはあぜいぜいする、それが人生ですよね。