海辺の風景

海野さだゆきブログ

「リバース ブラッド」全6巻 一柳凪 著 ヤス イラスト

自己により記憶をなくした主人公はやがて連続殺人事件に巻き込まれてゆく。そこにはある男が引き起こした世界の異変が深く関わっていた。

 

これも異能バトルものってことなんでしょうか。出だしのところはホラーの趣きが強くて、これはなんとなく乱歩っぽいなあ、なんて感じました。サービスなのかはさまれるエッチなシーンもその感を強める効果があったように思いました。

 

しかしながら3巻で饒舌な探偵が出てきて雰囲気が一変。なんかこう謎解きを急いでいるのかなあ、ちょっと読みにくいなあ、なんて感じていましたら、以降、世界観をめぐる衒学的記述が増えてきまして、その傾向が大きくなりました。

 

前に読んだ「レジンキャストミルク」もそうなんですけど、世界に関わることがどうもご近所お友だちの範囲で収まるっていうのがどうにも無理を僕は感じるのです。

 

かなり前に読んだ天使病みたいなことの話は世代を継いでいて、ご近所といっても時間軸方向に広がりがあるので、世界観とつりあっていたように思うのです。

 

この話も世代はまたぐのですけど、親子ゲンカのレベルなので、スケール不足なように思いました。「産霊山秘録」くらい時間、軽く千年くらい、と場所が、なにしろ月まで、広がりをもつと、世界観を語るには十分な舞台だと感じるのですけど。

 

語っている内容はかなり面白い、と思うのですけど、それとそれを語っている舞台の大きさが釣り合わないんです。

 

人物関係もお姉さんが亡くなって以降、尻すぼみな感じがしました。出てきた人たちをうまく結末に取り込めなかったように思います。当初のプランでは賄いきれなかったのでしょうね。

 

どんな世界を描くにせよ、やはり最初に、かなり細かいところまで煮詰めた世界構築をしておくのがよいのではないでしょうか。映画は前に出ている部分だけでは説得力がない、というのが分かっているので、出てこない部分もかなり煮詰めて考えて作るそうです、って誰に聞いた?

 

僕はてっきり、あの猫が「実は私は」とか変身して、機械じかけの神をやるのかと思っていたのですけど。無理に謎解きなんてやらなくて、投げっ放しジャーマンでも良かったのではないかしら、と。