海辺の風景

海野さだゆきブログ

「ボンクラーズ ドントクライ」大樹連司 著 白味噌イラスト ガガガ文庫

映画を撮らない映画部。自称監督のカントクはヒーロー特撮モノマニア、言うことは言うが実行を全く伴わない。それに付き合う主人公は成り行きまかせだけど、それもまた楽しい。

 

赴任した美女先生が貸してくれたビデオカメラ、それを奪還しに来た男の格好をした女子。彼女は映画製作のノウハウを持っていた。彼女に引き摺られるように初の映画製作は始まるのでした。

 

いましたよ「カントク」。1980年代初め、自主製作映画のスタッフになるべく「ぴあ」を手がかりに人探しをしてました、わたし。しかし、実際にものにできていた人は皆無。灯台もと暗しで、大学の同級生、これ説明必要ですね、本当に「クラスメイト」です、が学園祭に向けて映画製作開始。こっちは本当に作品として完成、僕もめでたく製作に加わったのでした。

 


僕らの夢はたそがれ色 - YouTube

 

中学生の分際で当時大学生だった金子修介監督の「キャンパスホーム」というコメディ映画に音楽スタッフとして参加。すっかり「映画音楽」に魅せられた僕は、絶対にアマチュア映画音楽製作スタッフになるんだと。。。。。めでたく大学生になったは良いけど、映画研究会?はいずこ?「ぴあ」にそれらしき人はいるけど、連絡がとれない。。。。。

 

僕は知らなかったのです。金子監督がアマチュアとしては異様に実力があり、実際学園祭の上映に映画関係者が見に来ていたらしいですし、例外中の例外の存在であったことを。。。

 

こちとらスコアの研究に没頭していた、というのに。。。。でも、1本でも残せたので、僕の青春は幸せというべきでしょう。スタッフが優秀だとできるんです、映画は。

 

その後も僕はバンドもやらずに、架空サントラを作り続けます。10ccか、ムーンライダースか。。。

 

さて、じじいの自分語りはここまで。

 

ボンクラーズ」は、ごっこが本物になる、その過程がそのまま、人間じゃない状態の生き物が、ちょっと人間らしくなる、という物語です。

 

ごっこの世界は誰も犯さないイノセントな世界です。そこでは想像が本物。しかし、そこで人は生きて行けるわけではないです。想像を現実の実装するためには、沢山学ばなくてはならないし、沢山の雑事をこなさなくてはなりません。

 

本当はこうやって作っているんだよ。

 

この「本当は」にいまだに、もう高齢者なのに、背を向けている人がいるわけで、若い人が逃げているのだって、僕は責める気にはなりません。

 

ヒロインはお姉さんに劣等感を感じている、とくくられてしまうかもしれないですけど、たぶんそれはハズレです。彼女はお姉さんという「実装」から学ぼうとしている、コピーによって、のです。同じになれるかどうかはわからないにせよ、なんらかの方法でお姉さんもああなった、ということが分かっているのです。それを掴もうとしてあがいているのですね。いくら防衛線を前もってはっていても、言葉でそういうことをしようとしていても、行動は正直ですね、彼女。

 

それに対してまあ男二人は「実装」に関して自覚的な努力をしない、イノセントにとどまりたいんですね、どこかしら。それはでも映画製作という「実装」で突破されていゆくんですね、いいですねえ。。。。

 

でも、どうして結末をあやふやにしたのでしょう?余韻ですか?照れですか?

 

いいじゃないですか、彼女は転校、「さよなら俺」で。