「五線譜なんて飾りですっ!」一色銀河著 wingheart イラスト
3人しか部員がいない吹奏学部に主人公と入部したのは、天才的なトランペッターの少女。しかし、彼女はアンサンブルとしての演奏が出来ない、アニソンおたく。
今までいくつか音楽ものを読んだけど、僕には何かを外しているように思えていた。その違和感の正体が今回分かった。著者は実際にブラバンで演奏していた、パートは管楽器だ。
そこだ!今までの音楽ものの作者はみんな「上物」の人だった。アンサンブル演奏をしたことがない人には良く分からない事だろうと思うけど、
音楽演奏はそのポジションで見えてくるものが違う
僕はベースをずっとやってきた。キーボードやギターも出来るが、基本ベースだ。上物の人、というのは、要するにメロディを主に担当する演奏者を指す。建物に例えると実に分かりやすいでしょう。僕らベースとかドラムスは「土台」。
みなさん、家とか建物とか見るとき、土台なんて見ます?見ませんよね。綺麗とか、格好よいとか、全部「土台の上」を言いますよね。
土台側からすると、土台があることをすっかり忘れて演奏する「上物」の方々は枚挙いとまないです。なので、土台がうんしょと移動するとか傾くとか、普通動かないのが土台でしょうに、結構忙しいのです。
土台側からすれば、この天才トランペッターの少女は「あーあ、やっちゃってるよ」という感じですね。音は出ているけど、音楽はやっていない。
作者は、このトランペッターがどんなにもたっても、走っても、土台はだまって追従しろ、と言うのですね。やれやれ。。。。。
そういう「俺様」を「上物」に頂いた演奏が聴いている人を楽しませるとは僕はまったく思わないです。
単なるプレーヤー視線では、一般の人に説得力を持つ話は書けない
そう思いました。
あ、wingheartさんのイラストは良いです。はい。
「殺戮のマトリクスエッジ」桜井光 著 すみ兵 イラスト
サイバーパンクっていうのでしょうか。人工都市に展開するアクションもの。1巻目なので、設定上の謎が謎のママなんですけど、かっこいい展開なので、ぐいぐい引き込まれて、読みごたえあります。
ヒロインもなにか奥あり訳ありで、期待値高くなります。ウマイです。こういうホンを書けるヒトがいるのだから、日本はアニメ、映画で苦労することはないのではないか、と思うのですけど。
現時点で3巻まで出ていますね。おいおい読んで行きます。
「二四○九階の彼女」西村悠 著 高階@聖人 イラスト
西村さんの「妄想ジョナサン」は僕にはとっても大切な作品。その彼の初期の作品。建造物の階層に色々なテーマをあてはめて、試行錯誤を文字にして行く、という趣き。
世界は単純には割り切れない。でも、何かを書こうとすると、何かが欠落してしまう。その解決方法がこの超多層構造の建造物。西村さんは、この問題を後に「妄想」という形で包括的に扱えるようになる訳ですね。まさにコペルニクス的転回。
各階層の人間はそこから脱出できるのに何故かそれを拒否する。そこですね、現実の「壁」。「妄想」は、それに対する答えでもあるのでしょう。
大好きな西村さんの足跡をたどれた作品でした。
「おじいちゃんもう一度最期の戦い」戸梶圭太 著 スケコロ イラスト
ほとんどの人はしらないでしょうけど、これ、大蔵映画ですね。見たことがない人に説明は難しいですけど、それこそ滝田監督がやりそうな内容です。
日本の文壇どころか、ライトノベルも避けて通るような題材を、これでもかとつぎ込んでいます。快感ですね、それだけでも。
人って、汚いし、他者に残酷だし、恐ろしく自己中だし、現実の「物語」はそういう「無理解のすれ違い」が原因で「やむえず」生じているんですね。
知らぬは本人ばかりなり
はたから見れば大笑い
それが人生のリアルだと思います。でも、だからこそ、本気で馬鹿やる、感じたままを生きる、考えたままをやってみる、それが尊いと僕は心底思うのです。
だって、案外人生短いですから、他人のことを気にしている間に終わってしまうのですから。
ロックやギター、三流映画に通じているとなお笑えるという仕組みです。
あ、「最後の戦い」ではなく「最期の戦い」っていうのが、最初に読者が気づくべきポイントですよね。
僕も「最期」が現実の年齢なので、余計に面白くて、爆笑しながら読んでいました。
全盛期のピンク映画って、こんな作品がごろごろしてました。こういう黒光するものを経験できないのは、不幸なのかな。。。。あ、でも、女性でもちゃんと分かって作品を経験できた人はいますよ。
なつこさん、お元気でしょうか。なつこさんに絶対のお勧めです。僕は真のやまとなでしこはなつこさんを言うのだと今でも思っていますよ。柳田の言う「妹の力」を持っていたのは僕の知る限り、なつこさんだけでしたから。