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海辺の風景

海野さだゆきブログ

わたしのマーガレット展 森アーツセンターギャラリー

しかしまあなんて分かりにくい構造なんだろう六本木ヒルズ。この建築は最低だ。案内のサインも最低。これで迷わない人はいない。森アーツセンターギャラリーへの行き方も不親切の極み。分かっている人はチケット買ったら左に行って、すぐ右のガードマンが立っているゲートをくぐれ、と行けるだろうけど、まず無理。だいたい美術館へ行くのにセンサー付きのゲートをくぐるなんて発想が僕にはなかったので、そっちはビジネスエリアだろうと通り過ぎてしまった。おかげでうろうろと10分以上迷った。それだけで疲れた。デザインが最低の美術館ってなんだろう。

 

直通のエレベータを降りると、これまた分かりにくい場所に出る。早速迷っている人が何人もいた。展望室へどう行けばいいのですか?と何人も聞いていた。このビルは建て直した方がいいね。

 

さて、ここが入り口なの?と思うセンスのないエントランスを入ると、スライドショーを見るためにちょっと待たされる。ちょっとした短編スライドショーだ。ま、王道は恋愛ものだから、それを中心としたひどく感傷的な内容だった。

 

今回の目的は原稿である。原画とは言いたくない。漫画は見るものではなく、「読むもの」というのが僕の定義だからだ。その原稿は本当に素晴らしいものだった。

 

わたなべまさこさんの原稿がトップバッター。いやあ、綺麗だ。こんなに綺麗なんだ、とびっくりした。当時この細かさは印刷で再現できていない。このふわふわした曲線を描ける技術はすごい。直しが見られないというか、いきなりペン入れしたのかも、と思うくらい綺麗で生き生きとした線だ。お隣は水野さん。水野さんはストーリーを描きたい、という感じの作家だ。それは線の勢いに良く出ている。

 

と、コメントしていったらきりがない。僕にとって感慨深いのは、沖倉さんの手書きをみられたことだ。例のスクリーントーン使わないぞ、である。いやあ、執念を感じるその細かさ。ただ、その分線は硬い。決意を読み取れる絵だった。

 

アタックNo.1』。ネットが3メートルみたいなことになっているのは時代を感じるけど、スポーツを通じて群像を描くという歴史の流れだ。『エースをねらえ!』。山本さんの絵は素晴らしい。もったいない。まだまだ沢山描けたと思う。

 

くらもちさんは、なんか動きのある絵でも真ん中でおさまっている感じがするのが、意外というか、やはりというか、発見だった。池田さんはベルばら展でもみたけど、ここでこうやってまとめてみると改めて分かったことがある。となりの女性が「よく週刊でやってたわねー」と言っていた。よく見ると線の量はそれほど多くはない。構図が素晴らしいのだ。画面構成。これは石森先生の『JUN』で試されたような手法がふんだんに用いられている。カットバック的なもの、ズームのようなもの、などなど。これはやはりこの大きさで見て初めて実感できるものだと思う。

 

時代順に見て行くと、マーガレットは多田かおるさん、いくみ稜さんあたりで、がらっと変わる。特に多田さんが後輩たちに与えた影響は絶大だと思う。先輩たちが描き込むことで表現しようとしたものを、逆に描き込まないで表現できることを示したのだと思う。そして、多田さんの描く男子は強引である。うーん、バブル的かもしれないけどね。そして女子に「ため口」きく、というのが親しみの現れ、という理解にはぴったりだったのだろう。そしてそれはより低年齢の読者に分かりやすかった。「女の成長を妨げるような愛し方をするな」男子ではない。自己肯定感が強いのも特徴だと思う。経済成長が一段落したことと無関係ではないだろう。成長とは現在の自分を否定しないとなし得ないからだろう。

 

『ホッドロード』は、最近母娘の物語だと読んだ人がいたけど、経済成長に取り残された者たちの物語というべきだろう。母娘家庭はいまだに取り残されたままだ。絵をみると、これはイラストレータの絵である。実はものすごく書き込むことができる技術があるのはカラー絵で十分に分かるだろう。が、描き込まないという絵の流行に忠実だったのだ。伝わらなければ始まらないから。何を描かないかの選択は意図的である。そう、イラストレーションの発想だろう。

 

最近の作家には馴染みはない。が、頑張っていると思う。流行りの絵柄から飛び出すのはたいへんな事だろうけど、そろそろ次のアクションが必要だろう。つまり、「分かりにくさ」への挑戦だ。でないと、読む前から素通りされてしまう時代だ、と思う。

 

最後、別マと週マの表紙が縮小され、敷き詰められた壁が出口だった。いやあ、かなりの時間見ちゃいましたよ。どれとどれが同時期に連載されていたのかなんて忘れていますから。でも、作家とタイトルを見るだけで内容をぱっと思い出せる自分にびっくりした。特に別マは全部といってよいほど覚えている時期がある。

 

僕の暗い青春にひとつの光だった少女漫画。岩館さんの「ふたりの童話」の原稿を前に、しゃがみこんで、しくしく泣いていたかった。息苦しい教室の窓から見える初夏の緑の輝き。戻りたくもない青春期だが、細い道が僕を導いてくれた。もう人生そのものが終わる。40年前をはっきり意識できて良かったと思う。終りに向かって歩く勇気が少し、あの頃のように細い道として見えるように思えた。